あれは6年前の 7月28日のこと
空は青く澄み渡り 予報も1日を通して晴れマーク
カブで片道1時間の 小さな竹林へ来ていた
竹林の前で朝早くから 畑仕事をされていた おじいさんに
「 いつもお早いですね 」と挨拶をして 竹林へ入った
ミョウガの群生があちこちにあり スッキリとした香りが
暑い日射しを 和らげてくれた
( 今日で記録取り 終わりそうだな )
お昼を過ぎた頃 作業の目処も立ち
何気なく空をみると 遠くに灰色の雲があった
( いやいや 今日は夕立の「ゆ」の字も言っていなかったもの )
雨具を持ってきていないRさんは 確かに近づく怪しい音に
非力な抵抗を続けた …ここ 外れてくれないかな
思いも空しく 俄かに風が変わり 暴れ始めたので
仕方なく記録ノートを ビニール袋へ入れ終わった瞬間 「 ビカッ 」
( 確か光ってから3秒で1キロ付近まで近づいているとか… )
「 1… バリバリッどどお-んっ ビカっっ シュシュシュー
・・・ ・・・ ・・・ 」
ダイチ ユレタ
ヒバナ アガッタ
ケムリ ミエタ
青白い「ぬりかべ」みたいに立ちすくみ 動けなかった
( 雷オヤジの的に 完全に入ったな… )
稲妻が大暴れしている最中 大粒の雨が落っこちてきた
水しぶきで辺り一帯が 白くなった
思考が停止していたRさんは 何故か草を見ていた
ピチピチと雨に揺れて 楽しそうぢゃないか!
( 草はカミナリに打たれない… ) ネコロンデミヨ
空を見上げるRさんの頬に やわらかな陽の光が当たった
( … イキテル … バイク 大丈夫かな ) ザザザーーーッ
… 「ぬりかべ」が 立ち上がった
よろよろと バイクのところへ出てみたRさんは ハッと目を見張った
目の前の畑の 向こう側のあぜ道に
朝のおじいさんがビニール傘を差し
身じろぎもせず こちらを見ていた (心配して 来てくださった…)
その強い強い 瞳の力は
Rさんの心に じん と染みた
澄みきった青空の日は おじいさんの瞳を思い出す