歴史ある町屋の杉古材を活かし「茶葉拝見箱」を制作
伝統技術と精緻な加工で、美しさと機能性を両立させた一品
KYO AMAHARE様の建物は築130年の歴史を持つ京町屋です。
このたび、町屋の扉として長く用いられてきた杉の古材をお預かりし、茶房「居雨」で使用する茶葉拝見箱を制作いたしました。
弊社が過去に手がけた、寺社の古材を用いた恵比寿箱の事例をご覧いただいたご縁から、今回の制作に繋がりました。

建物の一部として日々の出来事を見届けてきた木材には、年月とともに傷や割れ、擦り傷となってその歴史が刻まれています。
今回用いたのは、”扉”としての役目を終えた杉の古材。
長い年月での風化によって浮造り(うづくり)のような風合いになったものを、2次加工でさらに浮造りを施しました。元の風合いを、弊社の職人の技術によってさらに木目が際立つように仕上げました。
茶房「居雨」の卓の天板と呼応する「水たまりのかたち」に拝見箱を制作しています。
仕上げは摺り漆で、凛と落ち着いた風合いになっています。

浮造りなどの伝統的な手しごとに加え、緻密な図面製作と機械加工を組み合わせることで、精緻な仕上がりを実現しました。
制作にあたっては、木目を枯山水にみたてて景色として美しい部分を選びました。
また、拝見箱の内側には引き戸鍵の跡があるのも見どころであり、この材がかつて扉だったという記憶を伝えるものになっています。
茶葉をご覧いただく体験に配慮し、茶葉を入れる器がずれて音を立てることが無いよう、溝を精緻に加工し、美しさと使いやすさを両立させました。
古材の魅力を引き出しつつ、現代の空間に調和する、技術の継承と進化を体現した作品となりました。
浮造り(うづくり):
萓(かや)の根を干して糸で束ねた道具で、木目に沿って磨き上げることで木目のやわらかい部分がくぼみ、木目の形状がより美しく浮き上がる、指物における伝統技法。
Photography:Yuka Yanazume
記事ご協力: KYO AMAHARE | 茶房 居雨