
ぎょうさん木が生えている森の中では、種が落ちても芽を出す機会はなかなかありません。
種自身は芽を出したい、出したい思っているんでしょうが、そうは簡単にいきませんわな。
第一、日が当たりませんのやから。それが何かの拍子に上の木が払われたら、わっと、
いっせいに芽が吹いて競争が始まるんですな。日が当たるようになると、ぱーっと出る。
こうした状態を「 芽ばってる 」というんですな。手ぐすねを引いて待っているという状態
です。そうやって百年も待っていた種が芽を出しますのや。
後は厳しい競争ですわ。
とにかく競争を生き抜かんことには、千年、二千年という木には育ちませんからな。
「木のいのち木のこころ(天)」より抜粋 著者 西岡 常一 聞き書き 塩野 米松(草思社)